私は、少なくともこれまでは、決して明確な原発反対論者ではありませんでした。しかし、チェルノブイリ事故の当事国であるロシア・ウクライナ・ベラルーシの研究者であり、福島原発事故を同時代に体験し、また故郷の静岡県には浜岡原発が立地していることから、このまま安閑としていていいのだろうかという焦燥感が、今さらながら募ってきました。そこで、本HPに、「チェルノブイリ~東電~浜岡」と題し、原子力に関連した情報発信のコーナーを設けることにしました。なお、タイトルですが、私は「福島」という地名が今回の原発事故と結び付いてしまうことはあまりにも気の毒だと思っているので(今からでも原発を改名すべきと考えている)、あえて「東電」にしています。 |
No.0033 2012年1月26日
国際的なコンサル会社のErnst & Youngが、世界各国の再生可能エネルギー利用条件に関するレポートを定期的に発表し、同分野の「国別有望指数(CAI)」というものを制定しているということを知った。レポートはこちらのページからダウンロードでき、最新号は2011年11月発行の第31号となっている。
この資料では、世界の主要国(現状では40ヵ国と多くはない)を対象に、風力、太陽光、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギーの利用にまつわる様々な環境・条件(法制度、補助金、インフラなど)を評価し、それを指数化して、国別ランキングを制定している。実際の利用状況ではなく、投資の有望性に関する評価なので、注意が必要である。最新の2011年11月のランキングによれば、1位が中国、2位が米国、3位がドイツと続き、日本は15位となっている。
さて、これまでロシア・NIS諸国はまったく同ランキングの対象となっていなかったが、最新の2011年11月のランキングで、初めてウクライナが評価の対象になったことが注目される。初登場のウクライナは、100を最高点とする指数で37のスコアとなり、40ヵ国中32位の有望性と評価された。うち風力では指数37(32位)、太陽光では指数33(23位)とされている。以下では、レポートのなかでウクライナの状況に関して論評しているページを、抄訳してまとめておく。用語や事実関係など、やや心もとないところもあるが、悪しからず。
ウクライナは有望市場ではあるが、経済的不透明感と政治的不安定により、投資家は躊躇し、老朽化した発電所と劣化した送電網に起因して、エネルギー・システムは非効率なものとなっていた。
しかし、ここに来て、前向きな要因が出てきている。ウクライナ政府は2006年に発表した戦略のなかで、2030年までに電力の19%を再生可能エネルギーで賄うという目標を示しており、現在もその目標を追求している。また、2010年半ばには、IMFと2年半で150億ドルの新クレジットラインにつき合意しており、これにより投資家の関心が再び高まることが予想される。
ウクライナの再生可能エネルギーのポテンシャルには注目すべきものがある。以前の料金体系とは異なり、2009年4月には再生可能エネルギーの種類ごとに料金体系を差別化することをねらった「グリーン料金法」が採択された。これは、2009年1月1日現在で設定された基本料金に対し、種類ごとに異なる係数を適用するというものである。同法はまた、ウクライナの通貨フリヴニャの切り下げによりグリーン料金に不利が生じないよう、その時点のレートで換算されたユーロ建ての最低額を導入していた。グリーン料金法は、こうした料金体系でのグリーン電力の購入を2030年まで政府に義務付けると同時に、送電網へのアクセスを保証した。さらに、グリーン料金制度に変更が生じた場合には、エネルギー生産者は新旧ルールのうち有利な方を選択できる。また、サプライチェーンの安定化を図るため、2012年1月1日からはプロジェクトにかかわる物資・作業・サービスの30%以上が国内で調達される必要があり、2014年1月1日からはそれが50%以上になる。
ただし、2030年の目標を達成するためには、ウクライナはまず複雑な許認可制度を改善しなければならないだろう。また、国全体のグリッド・キャパシティが約7GWあるのに対し、再生可能エネルギーのポテンシャルの大きいクリミアでは2GWに限られることから、この点の改善も求められる。
グリーンエネルギー企業およびプロジェクトには、広範な税制優遇が適用される。それは、2011年1月1日から10年間の電力販売に対する法人税の免除、特定の部材の輸入に対する付加価値税の免除、プロジェクトのための土地購入に対する土地税の75%減税である。
ウクライナの再生可能エネルギー関連プロジェクトに資金を出してきたのは伝統的にウクライナ政府であり、2011年4月に政府は、2010~2015年の「省エネ経済プログラム」に割り当てていた財源をさらに70億ユーロ増額し、320億ユーロまで拡大した。その大部分がグリッドの近代化に向けられる。
ウクライナの風力発電のポテンシャルは大きい。しかし、その開発は進んでおらず、2009年末の時点で87MWが設置されているだけで、2010年中の設置はゼロであった。開放地点の平均風速は秒速6.5m程度で、丘陵地では8mに達する可能性がある。風力発電のポテンシャルは19~24GWに達する可能性があるが、建設許可を得ているところは数少ない。向こう5年間で750MWが新規稼働するという予測もある。クリミア半島とウクライナ南東部が最も有望である。クリミアでは900MWの風力発電施設を建設するプロジェクトに12億ユーロが投資され、第1ステージの125MWの建設は2011年中に始まる可能性がある。DTEKの子会社であるWind Power社が、アゾフ海海岸での1.2GWの風力発電施設建設に向けた作業に着手したところでもある。政府は、2030年までには、グリーン電力が奏功し、電力の20~30%を風力で発電することを目標に掲げている。
ウクライナは太陽光発電のポテンシャルも大きく、2010年末時点での設置実績は、ごくわずかである。ただし、オーストリアのActiv Solar社が2011年にクリミアのオホトニコヴォでのプロジェクト80MWの4フェーズのすべてを完了し、本件は中東欧で最大のPVプロジェクトとされている。ウクライナの2010~2015年の目標キャパシティは、1GWである。
ウクライナでは伝統的に農業が主要産業であったため、同国の再生可能エネルギー・ポテンシャルの3分の2は、バイオマスに関係している。現在、バイオマスによる発電は全体の0.5%に満たないが、その10倍以上の生産が可能であると考えられている。
水力発電は、現時点でウクライナで最も実際に活用されている再生可能エネルギーである。ウクライナには約22,400の河川があるが、うち100kmを超えるものは110にすぎない。したがって、小規模水力発電所のポテンシャルが非常に大きく、現状での設置は150MWにすぎないのに対し、ポテンシャルは2.3GWに上る。
No.0032 2012年1月19日
ロシアの原子力産業ポータルサイト「Nuclear.ru」が、ネット上で、「2011年にどのような出来事が原子力産業にとって最も重要だったか」というアンケートを行っている。回答数が現在のところ300あまりと少ないので、客観的な調査とは言いがたいが、2011年にどのような重要な動きがあったかを整理するうえでは有益だろう。私が閲覧した2012年1月19日時点での回答状況は、以下のとおりとなっている。
1.日本の「フクシマ」における原発事故:164票
2.ロシア下院選挙とその後の野党の反政府デモ:43票
3.イランのブシェル原発の稼働、ロシアのコラ原発4号機の稼働:30票
4.ロシアがベトナム、バングラデシュ、ベラルーシと原発建設協定:24票
5.ドイツ、イタリアが原子力エネルギーを放棄:22票
5.ロシア原子力公社「ロスアトム」内の汚職の取り締まり:22票
7.原発輸出を手がける「アトムストロイエクスポルト」の改組と、海外での設計を担当する「ルスアトム・オーバーシーズ」の設立:20票
2位の出来事は、原子力産業と直接の関係はないようにも思われるが、それだけインパクトが大きく、多方面に影響が及ぶとイメージされているのだろう。
No.0031 2012年1月2日
本コーナー「チェルノブイリ~東電~浜岡」を立ち上げてから、しばらくは熱心に更新をしてたんだけど、昨年の終盤に更新が滞ってしまった。一頃、原発・放射能に関する報道・情報が蔓延し、そうしたなかで素人の自分に何ができるのかという無力感や迷いを覚えるようになり、忙しかったこともあって、つい本コーナーを放置してしまった。
しかし、暮れに、『SIGHT』誌の最新号を目にして、はっとさせられた。『SIGHT』誌は、渋谷陽一氏が経営するロック出版社から出ている時事問題に関する季刊誌。下に見るように、3号連続での原発問題特集であり、最新号は「原発報道を終わらせようとしているのは誰だ」というタイトルになっている。
なるほど、氾濫する原発報道に食傷気味という感じもしていたが、言われてみれば、私を含めて、当初の衝撃や危機感が薄らいでいたかもしれない。かつて渋谷陽一氏は「(THE WHOの)ピート・タウンゼントはまだ怒っている」という名言を残したが、渋谷陽一も原発問題にまだ怒っている。怒ることに疲れていない。すごいぞ、還暦ロック評論家。私も少しはそのパワーを見習いたいと思った次第だ。
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